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美少女ゲーム年代記 (id:genesis)
genesisさんが編集されましたキーワード
「美少女ゲームの臨界点」が削除予定キーワードに移動されました。
削除理由は一言,「宣伝目的」とだけ添えられておりました。
せめて,ちょっとでも調べ,考えてからにしましょうよ……。作成者が利害関係者ではないということは直ぐに分かるところですし,仮に利害関係者が編集に加わっていたとしても規約には抵触しないような文面にしてあります。
自社名、自社製品などを登録すること自体は禁止事項としていませんが、内容が明らかに自己宣伝的である場合、はてな利用規約で禁止事項としている宣伝行為に該当します
驚いたのは,書誌情報を見て宣伝だと思いこむ人がいるということ。いやはや。
1位の「上藤政樹氏」が55冊とずば抜けています。しかし、正直この数字が出るまで情けないことに、この作家さんの事をほとんど知りませんでした。
(中略)
「虹の旅出版」という聞いたこともない出版社から半分以上出ています。彼はもともと同人作家で、同人メインでマンガを描いているらしいのですが、自分の同人誌を正式なマンガとして出版するためだけの出版社を設立し、今まで描いた同人誌などをどんどん出版しているようです。なので、「虹の旅出版」から出ている本はほぼ全て上藤政樹氏のものしかありません。同人誌を専門店で売るのではなく、自分で出版社を立ち上げ...
私も上藤政樹について詳しくはありません。しかし,ここに引用した文章が,少なくとも「虹の旅出版」に関しては明らかな誤りに基づいて書かれたものであることを指摘できます。以下,詳述します。
話は,昭和末期の1986(昭和61)年に遡ります。この年,松文館より『ハーフリータ(HALFLITA)』というマンガ雑誌が創刊されました。表紙はいがらしゆうを起用。連載陣には大野哲也,智沢渚優,ひんでんブルグ,みずきひとし,蘭宮涼――といった面々を抱えており,1990年代に活躍した漫画家達の揺籃として少なからず寄与したと言えるでしょう。
私見を添えておくと,『ハーフリータ』のコンセプトは,今日における『コミックエルオー(COMIC LO)』に通じるものがあったように思います。昨今では『LO』の〈意見広告〉が度々耳目を集めておりますが,自社広告にメッセージを込めるという手法は『ハーフリータ』にも見出すことができます。
ところが,宮崎勤事件をきっかけとして,1990年前後の時期にコンテンツ産業は《厳冬期》を迎えます。『ハーフリータ』は1991(平成3)年をもって休刊しています。さらに,発行元であった松文館も1993年前後に経営主体が変わっています(つまり,ブランドとしての「松文館」は継承されているが,その人的構成は別な組織です)。このことは,以前,図版引用のために(現)松文館の著作権管理担当者の方に版権の所在について問い合わせた際に確認をとっております。
『ハーフリータ』の特徴として,読者欄等で編集長(愛称:船長)がキャラクター性を発揮していたということが挙げられるでしょう。
その編集長(船長)氏が松文館を辞め,立ち上げた出版社こそが「虹の旅出版」なのです。このことは,智沢渚優『魅少女まっしゅグリル』(1994年10月,ISBN:4931343015)の「あとがき」に於いて明記されていることです。そうした経緯があるため,「虹の旅出版」から単行本を出しているのは『ハーフリータ』に縁のある作家であり,収録作品は同誌に掲載されながらも松文館からは単行本として出されなかったものが多いのです。それ故,かつては『ハーフリータ』で活躍していた作家達が新しい雑誌媒体等に活動の軸足を移すに連れ,「虹の旅出版」から刊行される本は少なくなっていきました。
件の上藤政樹が「虹の旅出版」から単行本を上梓するのは2000年に入ってからのことあり,その経緯については私の関知しないところです。
確かに申し上げられることは,2002年以降のデータだけを参照して「虹の旅出版は上藤政樹の個人出版社として設立された」という帰結を導いているのは,史実に合致しないということです。『ハーフリータ』については旧聞に属する話ですのでご存知なくとも致し方ない話でありますけれども,誤った情報が『えろまんがけんきゅう』を標榜するサイトで開陳されるのは困るので,書き記しておきます。
去る9月7日に多数のご参加を得て第1回目の会合を持ち活動の方向性を探ったわけですが,今回は学術研究分野の動きに焦点をあてての議論となります。
【予定されている議題】
私は直接には不参加ですけれども,第1点目についてレポートを提出する予定です。
第2点目では,今後助言を仰ぐ必要があるであろう方々についてお名前を挙げ,アプローチ方法について検討することになると思います。
第3点目。《おたく博物館計画》を進めておられる森川嘉一郎氏を主宰が訪問し,お話を伺ってまいりました*1。本会合では同計画の概要をお伝えするとともに*2,連携を講じることとした場合に生じる課題を明らかにしていくことになります。
▲ 建設予定地
興味ご関心を持たれた方は是非ご参加ください。今回の会合からの参加,今回のみの参加も歓迎いたします。何かございましたら,主宰(きつねさま)までご連絡ください。
*1:引用画像は,森川氏がC74に出展し頒布した計画書の表紙。
*2:同計画については,既に明治大学における学内承認手続は終了しています[http://www.meiji.ac.jp/chousaka/2007jigyougaiyou.pdf]。
d:id:then-dさんの呼びかけにより製作され,2007年8月のC72にて頒布された『永遠の現在』に寄稿した文章のうち,序から中盤にかけての部分です。なお,現時点では残部が未だあるそうなので,興味ご関心をお持ちの方は問い合わせてみてください。
まず最初に『E-Login』1998年8月号に掲載されたセールス・ランキングを見てみよう。これは,全国47店舗から寄せられた販売状況データをもとに作成されたものである。
| 1. | 臭作 | エルフ | 1998-03-27 | 3,740 pt |
| 2. | WHITE ALBUM | リーフ | 1998-05-01 | 3,604 |
| 3. | DiaboLiQue | アリスソフト | 1998-05-28 | 2,601 |
| 4. | 王道勇者 | アリスソフト | 1998-04-02 | 2,448 |
| 5. | キャッスルファンタジア | studio e.go! | 1998-05-22 | 2,108 |
| 6. | ONE | Tactics | 1998-05-29 | 2,057 |
| 7. | 紅い瞳のセラフ | BISHOP | 1998-05-02 | 1,581 |
| 8. | アスガルド | ZONE | 1998-04-17 | 1,411 |
| 8. | Natural | フェアリーテール | 1998-02-06 | 1,411 |
| 10. | DAWN*SLAVE | U-Me Soft | 1998-05-29 | 1,064 |
集計対象期間は同年5月7日~6月4日であるから,5月29日に発売となった『ONE』にとっては不利であることは否めない。しかし,歴史を遡って眺める目からすれば,あまりにも不遇な位置づけとして写るだろう。翌月号を見ると,すでに『ONE』は売上げランキング外である。かろうじて「読者が選ぶ期待の新作ソフト」の欄に名前が見られるのみであるが,それにしても6位止まり。
なお,翌月号の1位は4,335ポイントを獲得した『下級生』(エルフ,1998年6月26日発売)である。1998年を代表する大作『WHITE ALBUM』と『下級生』の狭間にあって買い控えが起こっていたにしても,同時期発売の作品との比較で見ても売れていないことの説明にはなるまい。
より詳細なデータを求めて『月刊デジタルメディア・インサイダー』(ギャガ・コミュニケーションズ刊)を参照してみよう。この資料は,当該時期において最も信頼に足るデータを提供している。それによれば,1998年5月に5,670本が売れたと計上されている*1。推計によると,『ONE』の出荷本数は初回版が約9,000本,通常版が約6,500本であるとみなされている*2。1998年の年間売上げ本数は,『臭作』が約9万4千本,『WHITE ALBUM』が約6万5千本,『下級生』が約5万4千本であると言われているから,上位作品との比で市場規模を考えると凡そ十倍の開きがあったことになる。
続いて,美少女ゲーム雑誌としては老舗にあたる『パソコンパラダイス』を開いてみる。発売前月にあたる1998年5月号では62作品中39番目での登場という下位の位置づけであるが,何にも増してページの最上部に添えられた一文が目を引く。
「ちょっと…恐いかも」
さらに〈いたる絵〉に添えられたキャプションは
「表裏があったり盲目だったり失語症だったり自閉症だったり,女のコはみんな個性の塊?」
だ。およそ購買意欲を掻き立てるには程遠い紹介のされ方である。販売戦略に関しては販売元であるtacticsにも帰責するところであって,この号には広告掲載があるけれども,肝心の翌6月号には見当たらない。
しかし,秋風碧氏の呼びかけにより実施された「1998年ベスト恋愛ゲーム投票」では,第4位(15票)につけた『Natural ~身も心も~』(同年2月,フェアリーテール)はおろか,『WHITE ALBUM』すら第2位(45票)に退け,『ONE』が圧倒的な支持(65票)を集めて第1位につけるという快挙を成し遂げている。なるほど,これは『ONE』のテクストが高く評価されたことの表れであろう。
しかし,本稿では作品の内側へと立ち入ることを遠慮して,コンテクスト上の『ONE』を思い起こしてみようと思う。
『美少女ソフト全カタログ '90‐'97』*3という文献がある。後に編まれた『美少女ゲーム歴史大全』*4の方が広い期間(1982年~2000年)を扱っていて網羅的であるし,解説がコラム風に仕立てられていて読み物としては上なのだが,カラーページの割合が少なく掲載写真は限定的である。対して『全カタログ』の方は添えられた文章は簡素であるものの,凡庸な作品に対しても分け隔て無く画面写真をカラーで載せているし,価格・発売機種・媒体などDOS時代ならではの情報がまとめられている。
いずれも美少女ゲーム史を整理しようと試みた史料として有用であるが,編集方針の違いに着目して眺めてみると,当時の状況を偲ぶことができる。
『全カタログ』については先に《'95年度版》*5が刊行されており,こちらでは846本のソフトが収められている。それが《'97年版》になると1,026本に膨れあがったため,上下巻の分冊になっている。さて,あなたが編集者であったならば,どのようにして二分割するだろうか?
本書の場合,ブランド名の順にページ構成をしているのにも関わらず,事典のように五十音で区切ることをしなかった。上巻も下巻も「アーヴォリオ」の作品から始まるのである。ではどうしているのかというと,その性質をもって分類をしているのだ。
かかる区分法によって,均等な配分を得ている。ちなみに,リーフの『雫』『痕』はAVG編へ収載されている。
パソコンゲームをAVG/RPG/SLGという性格でもって分類することは,その黎明期にあっては自然な思考であった。例えばパソコン通信「PC-VAN」のパソコンゲームSIGは,1994年の改組時にボードを上記の3つに分けている。端的な例を挙げていくと,『オホーツクに消ゆ』みたいに謎解き要素を含むものはAVG,『ドラクエ』や『ウィザードリィ』みたいにキャラクターを操るのがRPG,『信長の野望』『大戦略』みたいに数値を操作するのがSLGであるという認識があった。美少女ゲームにしても,見せ場に出てくるグラフィックの質が異なるという差異はあるが,1980年代にあってはAVG/RPG/SLGになぞらえたゲーム構造を持っていた。
1982年に発生し四半世紀を経るに至った美少女ゲームが,その構造において変革を遂げたことは3回ある。
まず第1が『プリンセスメーカー』(1991年5月,GAINAX)であるが,これによりキャラクターを数値情報でもって捉える手法が編み出された。子育てSLGという体裁を装っていた『プリメ』は美少女ゲームの持つ欲望を去勢していたものの,その虚飾は『卒業~Graduation~』(1992年6月,JHV)によって剥ぎ取られ,ここに〈恋愛シミュレーション〉が成立する。このフォーマットは『ときめきメモリアル』(1994年5月,コナミ)によって完成度が高められ,〈ギャルゲー〉の型として普及していくこととなる。なお,数値化という手法の先に現れたのが,SM調教シミュレーションである『SEEK ~地下室の牝奴隷達~』(1995年3月)であり,メイドさん育成調教シミュレーションたる『殻の中の小鳥』(1996年,BLACK PACKAGE)&『雛鳥の囀』(1997年,STUDiO B-ROOM)である。
第2の変革は,『同級生』(1992年12月,elf)によって成された。端的に表現すれば,「AVG系とSLG系という2つの流れが,RPG型のゲームシステム上で融合した」のである。当時を述懐して,馬場隆博(ビジュアルアーツ代表取締役)は次のように言う。
それまでのエロゲーといえば,移動先である「場所」に,キャラクターやそのセリフ,そして主人公のモノローグなどいわゆる「シーン」がくっついている構造をしていました。この「シーン」をひとつひとつクリアしてゆくことこそが,ゲーム部分の本質になっていました。しかし『同級生』では,この「場所」を中心としたシーン構成から,なんとキャラクター,つまり「ゲーム内の登場人物」にセリフや主人公のモノローグをくっつけたシーン構成になっていたのです。(中略)
この作品が発表された瞬間から,あちこちと移動を繰り返し,エンディングを目指していくというそれまでの「ゲーム」は,それぞれの物語を何度も楽しめ,バーチャルな恋愛や感動できる人生をリアルに,そして感情豊かに疑似体験できるという「なにか」へと変革を遂げたわけです。
『PC Angel』2002年10月号64‐65頁より引用
これにより,従来シーケンシャルであることを余儀なくされていたゲーム進行は,格段に自由度を得ることになる。
そして第3の変革が,いわゆる〈ビジュアルノベル〉の登場である。先ほど『美少女ソフト全カタログ』を引き合いに出したところであるが,そこで見られたようなAVG/RPG/SLGという分類手法を無効化するほどの影響力を与えたのである。
ビジュアルノベルという手法を美少女ゲームに取り込んだことがリーフ三部作の功績である――というのは衆目の一致するところであろう。すなわち,『かまいたちの夜』(1994年11月,チュンソフト)によって考案された,プレイヤーを文章と音楽によって構成される物語世界へと引き込む手法の適用である。
ミステリーやSFの要素を加えることでシナリオを構成することにかけては,剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)が先んじていた。『DESIRE ~背徳の螺旋~』(1994年7月,シーズウェア),『EVE burst error』(1995年11月,シーズウェア),『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(1996年12月,elf)の三部作が金字塔であるが,ゲームシステムを組み立てることから剣乃の作業が始まっていたことに留意しなければならない。
1996年は,前年11月に発売されたWindows95が普及を遂げた年である。1996年12月,アリスソフトは『鬼畜王ランス』をWin専用CD-ROMで提供しており,潮目の大きな変化であった。換言すれば,1996年はPC-9801(のVM仕様)を極限まで使いこなすことができる技術水準にまで到達していた時期でもあった。大手ソフトハウスが大作を出す傾向が強かった頃であり,エルフの『下級生』(同年6月)はフロッピィディスク17枚組,アニメーションで知られるソニアの『VIPER-CTR ~あすか~』(1997年1月)に至ってはFD40枚組。陵辱ものでも,スタジオメビウス『悪夢 ~青い果実の散花~』(1996年4月)は修学旅行中の女子生徒22名を拉致するまでに人数が膨れあがる。また,フェアリーテールはコスプレ要素をいち早く取り込んで『Pia☆キャロットへようこそ!!』(1996年7月)を製作しており,ポップな恋愛路線を手堅く抑えている。
このようなDOS時代の爛熟期にあって,『雫』(1996年1月)ならびに『痕』(1996年7月)はオカルト的要素を織り込むことにより,独特のポジションを得るに至った。だが,高橋龍也と水無月徹のコンビは,第3作目で“あえて”別路線を選択し,学園を舞台にした恋愛もの『To Heart』(1997年5月)を発表した。
プロデュースした高橋の発言を追うと,かなり策略的に作品を組み立てていたことが伺える。2000年5月に公開されたTINAMIXインタビューでは,製作にあたって何を意識したかを問われたのに対し,次のような返答を返している。
やはり会社を大きくして、体力をつけていかなくては、という切実な思いがありまして。それよりもいま『To Heart』をやっておかなきゃと思ったんです。この頃ファンタジーをやってたら、いまのようなメーカーじゃなくて、よりマイナーな層に支持されつつも、小さいビルのままの会社だったと思います。
そのような製作態度で臨んだが故に,次作は前三作と趣を異にする『WHITE ALBUM』(1998年5月)だったのである。シナリオは原田宇陀児,原画はら~・YOU(カワタヒサシ)。高橋と水無月は『WA』にあっては一歩退いた立場での関与であるため,リーフの手になる正統なビジュアルノベルとしては認識されていない。
その後,リーフは『こみっくパーティ』(1999年5月),『まじかるアンティーク』(2000年4月)と別路線を歩んでから,ノベル形式の『誰彼(たそがれ)』(2001年2月)をリリース。その間にみられる高橋の活動は,1999年4月から放映されたアニメ版『トゥハート』の監修であったりPlayStationへの移植作業であったりして表に出てこないものであり,高橋&水無月に対する渇望が続く状況に陥っていた。だが,その直後の2001年2月に暴露された通称「552文書」において,原田に加え高橋と水無月までもが退社していたことが明るみになったことから,リーフの原理主義的支持層は瓦解する。補足的に述べておくと,匿名掲示板「2ちゃんねる」は1999年5月に運営が始まっているが,この時期にはおたくネットワーク社会の動向を左右するに足りるだけの影響力を有するに至っていた。
ファンダムの動向から見ると,『ときメモ』により芽吹いたギャルゲー系同人誌市場が,次なる対象を欲していた時期に現れたのが『To Heart』であった。経験的に言ってジャンルの賞味期限は長くても2年程度であり,大衆としての興味は次々に変化していく。そのコンテクストにおいて言えば,「高橋&水無月のリーフ」が長期間にわたって新たなコンテンツの提供をしなかったことは,二次創作市場において致命的であった。その間隙に対して絶妙な送り込みを行い,『To Heart』の後任としての地位を得るに至ったのが『Kanon』(1999年6月)だったのである*6。その後,このバトンはKeyというブランドへの支持を介して『AIR』(2000年9月)へと渡ってから,ビジュアルノベル形式というフレームワークを踏襲した同人作品TYPE-MOON『月姫』の発見(2000年の冬コミ後に爆発的な波及が起こる)へと繋がり,同様の言及効果を巻き起こすことに成功した07th Expansion『ひぐらしのなく頃に』(2004年秋より話題を呼ぶ)へと引き継がれていくことになる。
それでは『ONE』は,どのようなコンテクストに置かれるのか。
後続群との関係で言えば『Kanon』が評価されるための素地を用意した,ということに尽きる。きつねさま氏とワンド氏によって収集されたBLISTによれば,1999年だけで470本近い数の作品がリリースされている*7。次のトレンドとなり得る候補は,多数用意されていたわけである。『To Heart』が醸成したものの一つに,学園を舞台とした恋愛ドラマという筋立てがある。そしてもう一つ重要なものとして,女の子たちとの心地よいコミュニケーションを育む〈仲良し空間〉という構造がある。先にも挙げたTINAMIXインタビューにおいて,高橋は次のように言う。
たとえばあかりと恋人同士になったからといって、他との関係が終わるわけじゃないんですよ。あかりを選んだから志保はいなくなった、にはならないんです。『White Album』はそういう決断をしなければいけなかったんですけど、『To Heart』ではそういうつらい選択は抜きなんです、あえて触れてないんです。
リーフは『WHITE ALBUM』で〈仲良し空間〉を崩し,新たなテーマを提示してみせようとした。その企図は達成されたわけであるが,受け手の支持を得られたわけではなかった。おたくコミュニティが総体として望んだのは〈仲良し空間〉の維持・継続だったのである。その意味では『ONE』というコンテンツが最も適合するものであった。さらに,『To Heart』の構成要素を分解したうえで再構築してみせたことも『ONE』の功績であろう。状況設定を説明する装置としての幼馴染みであった「神岸あかり」は長森瑞佳へ,〈仲良し空間〉を象徴する「長岡志保」は七瀬留美へと組み替えられるというパスティーシュが行われている。
(この後の文は黒歴史になりました。ボクのこと忘れてください。)
*1:http://www.alles.or.jp/~syaran/marimo/doukou/9805.htm
*2:http://www.alles.or.jp/~syaran/marimo/honsuu/tactics.htm
*3:ISBN:4885327067〔上巻〕 ISBN:4885327075〔下巻〕 コスミックインターナショナル,1997年3月
*4:ISBN:4821107171 ぶんか社,2000年9月
*5:ISBN:4773007419 笠倉出版社,1995年12月
*6:周辺状況を記しておくと,『カードキャプターさくら』が1998年4月から衛星波で,翌99年4月からは地上波で放映されており,二次創作の主要な活力となった。
新千歳空港を07時30分に出る始発便に乗り,羽田空港を20時55分に出る最終便で帰ってきました。これが仕事ならば,やりたくない移動パターンです。開会時刻であり10時の数分前に会場到着。
総勢12名が集まりました。まずは参集者の自己紹介となったわけですが,足を運んだ顔ぶれを分類すると次のようなパターンになりました。
でも,交友関係を聞いてみると既にお知り合いだったという組み合わせが多くて,出自グループとしては概ね3つくらいになってしまいました。「保全活動に主体的に取り組もうとするメンバーって,結局この程度の人数ですよね~」という確認にもなりました。しかしながら,活動が具体化していけば此処の場面で協力してくれる人が出てくると思いますので,まずは軌道に乗せることが大事です。
会議は全体で2時間でしたが,うち1時間ほどかけて活動方針のアイデア出しを。皆さん実態をわきまえていらっしゃるようで,「○○という方策は思いつくが,これは費用が……」「××はアプローチしてみたことがあるけれども,ダメでした」と,夢を見られるような話はほとんどありませんでした。
ここで出てきたアイデアを方向性で整理すると,次の3つに集約できます。
第1回会合では方向性を詰めることはせず,選択肢を表示させたところで散会いたしました。まずは情報収集すべき段階ですしね。今後1年ほどかけて,
といった考慮事項につき,ロードマップを提示していこうという腹づもりです。
この活動,メンバーは初回参加者で固定するつもりはございません。第2回以降の会合でも,興味ご関心を持たれるテーマがありましたら足をお運びください。
さて,後日談ならぬ後時談。
参集者そろって近くのファミレスへ移動し,昼食をいただきながら懇談。それから喫茶店へ移動して,さらに話し込みました。冷房の直撃する場所に座ったために寒くなって外に出ようと言い出したのが15時過ぎでしたから,3時間ほど会話していたことになります。
それから,チラシ集めに精を出しておられる2人について秋葉原を2時間かけて巡回。天候が崩れ大粒の雨が降り出したので居酒屋に駆け込んだのが,開店準備中の16時50分。途中,アキバを通行中であったところをtwitter経由で補足されたd:id:Su-37さんを呼び寄せたりしながら,美味しくビールを酌み交わし,店を出たのが19時。
結局,一部の方とは10時間に渡ってご一緒いたしました。おかげさまで,お名前とプロファイルが一致する程度には親しく言葉を交わすことができました。今回は参加のために少なからぬ出費(交通費18,400円)をしたのですが,有意義な時間を過ごせて満足した一日になりました。
http://rosebud.g.hatena.ne.jp/genesis/20080725 にてお知らせした検討会の立ち上げ会合が下記の通り開催されることになりました。
- とき 2008年9月7日(日)午前10時より正午まで
- ところ 東京都港区生涯学習センター(ばるーん)202学習室
内容: 事業規模説明,PCゲーム保全主体・手法に関するワークショップ形式の意見交換(今後の方向性検討),連想構造分析アンケート
詳細につきましては,発起人でありますきつねさまからの告知をご覧ください。
会場の定員は17名と聞いています。多くの方においでいただいた場合には会場が手狭となってご不便をおかけするかもしれません。告知では事前の参加表明を求めてはおりませんけれども,予めご一報くだされば幸いです。
追記:
航空券の手配が出来ましたので,私も参加するつもりです。
せっかくの機会ですので,昼下がりの時間帯に茶話会など催したいと思います。午後のオプショナル・ツアーについては別途ご案内致しますので,まずは午前中のワークショップについて,参加の意向をきつねさまへとお伝えください。
1970年代から90年代にかけて発表されたパソコンゲームを記録として留め,散逸しつつある史料を集積して後世に伝えるべく,特定非営利法人を設立して受け皿とし,保全活動に取り組むことはできないだろうか――というご提案をきつねさまより賜りました。
この先の議論を踏まえて組織形態を模索することになるでしょうが,誠意協力しようと考えているところです(資金面では心許ないですが,智恵と労力でしたら可能な限り)。
以下,設立準備に向けた呼びかけ文を引用します。
現在の80年代パソコンゲームは、愛好家が個人で所有している形になっておりますが、私も含めて高齢化が進んでおり、恐らくあと10年なり20年なり経過した折には、世にはパソコンゲーム黎明期の状況を知るなにものも残存していないのではないかと切実に思ったからです。
わたしたちの息子なり孫なりが、ゲーム発展史を構築していく責務を社会からようやく得たとき、そこにわたしたちは何を手渡してやれるでしょうか。それが薄れかけた記憶だけということのないよう、今のわたしたちが努力する必要があるのだと思います。悲しいかな、次の世代は現在の議論には参加できない。数十年後、数百年後の今は届かない声に耳を傾けたとき、恐らくコンピュータゲームの保全は、現在急いで取り組まねばならない事業の一つだといえるのではないでしょうか。
今でもタイトルの散逸が進んでしまった状態ですが、今ならまだ間に合います。ゲームを愛する人に少しでも耳を傾けていただけるならうれしいことです。
未だ提案段階に過ぎませんが,近く会合を持って活動の方向性を決めようという話をしております。興味関心を持たれた方は,発起人であるきつねさまと連絡をとってみてください。
▲ アンジェ『KISS』(1992年,PC9801版)
今すぐに取り出せるところにあった中で最も古い作品。原画:こと氏。幸い3.5'FDDなので物理的に読み出し可能な状態にはあるのですが,磁気は大丈夫だろうか……。パッケージ裏面に記載されている記載なども貴重な史料となりつつあります。
ゲームの分類法については,昨夏にthen-dさん企画による評論本『永遠の現在』に駄文を書きました。要旨を書き出しておくと,1980年代にゲームの分類方法として定着した《ADV》《SLG》《RPG》という基準が,
――という経緯を辿っていくなかで,アルファベット3文字によるジャンル表記が購買の指標にならなくなっていったことを示しました。
ここまでは昨夏に考察を展開していたのですが,さて,ジャンル名の冗長化が始まったのはいつ頃だったか。
直感で立てた仮説は,アリスソフト(AliceSoft)起源説です。かなり以前からジャンル名で遊んでいたという覚えがある。そこで,裏表紙がアリスソフトの広告で占められている『E-Login』のバックナンバーを漁ってみたところ,1996年6月号掲載の『学園KING』では「学園青春バトルらぶらぶミステリアスうきうきフィールドタイプRPG」を謳っていることが確認できました。長いです。
ただ,これが他のソフトハウスに波及したのは,かなり後になってからのようです。『パソコンパラダイス』『PC Angel』といった創刊時期の古い雑誌は,ジャンル分類については簡潔な表記が長く続きます。
変化が見えやすいのは『カラフルPureGirl』でした。同誌「ソフトラッシュスケジュール」に掲載されたイレギュラーなジャンル名を抜き出してみると,2000年の中頃を過ぎてから目に見えて錯綜したものが多くなります。
| 掲載号 | ジャンル分類 | 作品名 | ソフトハウス |
|---|---|---|---|
| 2000年2月号 | カウンセリングSLG | 『依頼人1』 | (Factor) |
| 学園ラブコメAVG | 『INNOCENTな天使たち』 | (for) | |
| 誘拐調教SLG | 『あえぎの館2』 | (アクエリアス) | |
| 旅情AVG | 『ロードラブストーリー』 | (Corett) | |
| 妖精愛玩SLG | 『My☆フェアリンク』 | (ライトプラン) | |
| 徹底フェラチオ専門ノベル | 『Luvllatio*Maniax』 | (ANOTHER ROOM) | |
| メイド生活SLG | 『MAIN iN HEAVEN』 | (PIL) | |
| 多汁AVG | 『放蕩仙女』 | (MEGAMI) | |
| 盲目純愛AVG | 『光を……』 | (LiLiM) | |
| 2000年3月号 | ラブコメ経営AVG | 『葵屋まっしぐら』 | (ソフトハウスキャラ) |
| 2000年4月号 | フェロモン誘惑AVG | 『みらくるテンプテーション!!』 | (エスクード) |
| 2000年5月号 | カルト宗教AVG | 『猥』 | (ハイパースペース) |
| ミレニアム探偵AVG | 『不確定世界の探偵紳士』 | (デジアニメ) | |
| 超パズルタイプ略奪SLG | 『皇帝陛下になろう!』 | (r.) | |
| 動物娘捕獲虐待SLG | 『ぐれえとハンティング』 | (大吟醸) | |
| 鬼畜シアターノベル | 『鬼ノ棲ム桜』 | (ANOTHER ROOM) | |
| 家庭内陵辱調教SLG+AVG | 『家族の絆』 | (BIND) | |
| 2000年6月号 | シュール系エロAVG | 『トイレの女神様』 | (オーサリングヘヴン) |
| 私語りAVG | 『檻の中のわたし』 | (CAGE) | |
| 2000年7月号 | 海上パニックAVG | 『暁の岩礁』 | (ARIEROOF) |
| マルチ秘め事SLG | 『ぺろぺろCANDY2』 | (ミンク) | |
| 2000年9月号 | 病院探偵AVG | 『SHE is...』 | (BELL-DA) |
| エロティック料理SLG+AVG | 『さすらいの料理人』 | (ユピテル) | |
| ドラマティックアニメーションAVG | 『eye's ONLY』 | (ainos) | |
| おバカAVG | 『見参!! 桃ちゃん侍』 | (アクアハウス) | |
| スーパーロリロリAVG | 『おまかせ☆でまかせ』 | (Triangle) | |
| スポーツ陵辱AVG | 『Sweet Pleasure』 | (Cronus) | |
| どきどき岸作成SLG | 『プリズム・ハート』 | (ぱじゃまソフト) | |
| シュール系陵辱AVG | 『凌辱鬼』 | (コンプリーツ) | |
| 潜水艦ドタバタパニックAVG | 『凱旋! 無花果艦長!』 | (びい・えふ) | |
| 2000年10月号 | 詰めRPG | 『零式』 | (アリスソフト) |
| 大逃走SLG+AVG | 『うえはぁす』 | (ソフトハウスキャラ) | |
| のびゲー | 『Cherry boy Innocent girl』 | (LIBIDO) | |
| ケツゲー | 『ぶるまー2000』 | (Liar-Soft) | |
| 純愛もの学園恋愛ビジュアルノベル | 『笑わないエリカ』 | (ペンギンワークス) | |
| 2000年11月号 | サイコサスペンスAVG | 『Love call』 | (ミンク) |
| 和風ドラマティックAVG+ノベル | 『浪漫珠』 | (AngelSmile) | |
| 死人復活AVG | 『神サマお願い!!』 | (BELL-DA) | |
| 3Dインタラクティブ強制愛撫SLG | 『INTERACT CITY』 | (Dreams) | |
| コミカル覗きマネージメント | 『B.B. Oh,Yes! Jonny!』 | (フェアリーテール) | |
| 車内調教SLG | 『車畜』 | (アーカムプロダクツ) | |
| 美姫調教SLG | 『EXILE』 | (ちぇりーそふと) | |
| 情愛育成SLG+AVG | 『Choir』 | (Rateblack) | |
| インモラル・エロコメAVG | 『Don't Stop ママ?!』 | (オーサリングヘヴン) | |
| 星座AVG | 『星降る里へ』 | (エスクード) | |
| おバカAVG | 『開運戦隊 巫女さんレンジャーリベンジ』 | (アクアハウス) | |
| 純愛コミカルAVG | 『るな・シーズン』 | (えみゅ~) | |
| シュール系ハードボイルド調捜査AVG | 『CASE266』 | (コンプリーツ) | |
| 2001年1月号 | ラブコメえろベンチャー | 『Cute』 | (for) |
| リアルタイムノベル | 『空のたかく』 | (UNCANNY!) | |
| 対戦ラヴほたAVG | 『HAPPY螢荘』 | (WAFFLE) | |
| 釣りゲー | 『女釣り』 | (ZENOS) | |
| やるコメAVG | 『めぞんなやつら』 | (エクセルタ) | |
| バイオレンスアクションAVG | 『吸血殲鬼ヴェドゴニア』 | (ニトロプラス) | |
| 学園熱血ラブコメAVG | 『Cosmic Girls』 | (ギルティ) | |
| 純情青春AVG | 『青い鳥』 | (ぱんだはうす) | |
| ぶっかけAVG | 『ぶっかけ天使ミルキー&シルキー』 | (エヴォリューション) | |
| 3D尾行ゲーム | 『リバーシブルフェイス』 | (イリュージョン) | |
| 触手テーブルゲーム | 『淫獣幻夢3』 | (リンガーベル) |
このようなものが見受けられます。全数調査ではないので正確ではありませんが,概ね次のような結論が導けるかと思います。
で,あともう一つ付け加えるとすれば――
でしょうね。調べなくても言えそうな陳腐な推論ですけれど。
冒頭で一旦アリスソフト主因説を提示して放棄しましたけれど,ここで改めてAliceSoftの動向と照らし合わせてみます。2000年7月6日に『SeeIn青(シーンAO)』を発表していますが,〈学園もの・純愛系・コマンド選択式〉という巷にごくありふれたスタイルでありました。これが逆にアリスソフトにしては珍しい傾向を持つ作品だと位置づけられることになります。
ジャンル名冗長化に少なからず影響のあったアリスソフトに敬意を表して,この現象は『SeeIn青』以降に顕著である――と締めくくることにしましょう。ちなみに『SeeIn青』のジャンル分類は「AVG+LoveLove」です。