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美少女ゲーム年代記 (id:genesis)
ゲームの分類法については,昨夏にthen-dさん企画による評論本『永遠の現在』に駄文を書きました。要旨を書き出しておくと,1980年代にゲームの分類方法として定着した《ADV》《SLG》《RPG》という基準が,
――という経緯を辿っていくなかで,アルファベット3文字によるジャンル表記が購買の指標にならなくなっていったことを示しました。
ここまでは昨夏に考察を展開していたのですが,さて,ジャンル名の冗長化が始まったのはいつ頃だったか。
直感で立てた仮説は,アリスソフト(AliceSoft)起源説です。かなり以前からジャンル名で遊んでいたという覚えがある。そこで,裏表紙がアリスソフトの広告で占められている『E-Login』のバックナンバーを漁ってみたところ,1996年6月号掲載の『学園KING』では「学園青春バトルらぶらぶミステリアスうきうきフィールドタイプRPG」を謳っていることが確認できました。長いです。
ただ,これが他のソフトハウスに波及したのは,かなり後になってからのようです。『パソコンパラダイス』『PC Angel』といった創刊時期の古い雑誌は,ジャンル分類については簡潔な表記が長く続きます。
変化が見えやすいのは『カラフルPureGirl』でした。同誌「ソフトラッシュスケジュール」に掲載されたイレギュラーなジャンル名を抜き出してみると,2000年の中頃を過ぎてから目に見えて錯綜したものが多くなります。
掲載号 | ジャンル分類 | 作品名 | ソフトハウス |
---|---|---|---|
2000年2月号 | カウンセリングSLG | 『依頼人1』 | (Factor) |
学園ラブコメAVG | 『INNOCENTな天使たち』 | (for) | |
誘拐調教SLG | 『あえぎの館2』 | (アクエリアス) | |
旅情AVG | 『ロードラブストーリー』 | (Corett) | |
妖精愛玩SLG | 『My☆フェアリンク』 | (ライトプラン) | |
徹底フェラチオ専門ノベル | 『Luvllatio*Maniax』 | (ANOTHER ROOM) | |
メイド生活SLG | 『MAIN iN HEAVEN』 | (PIL) | |
多汁AVG | 『放蕩仙女』 | (MEGAMI) | |
盲目純愛AVG | 『光を……』 | (LiLiM) | |
2000年3月号 | ラブコメ経営AVG | 『葵屋まっしぐら』 | (ソフトハウスキャラ) |
2000年4月号 | フェロモン誘惑AVG | 『みらくるテンプテーション!!』 | (エスクード) |
2000年5月号 | カルト宗教AVG | 『猥』 | (ハイパースペース) |
ミレニアム探偵AVG | 『不確定世界の探偵紳士』 | (デジアニメ) | |
超パズルタイプ略奪SLG | 『皇帝陛下になろう!』 | (r.) | |
動物娘捕獲虐待SLG | 『ぐれえとハンティング』 | (大吟醸) | |
鬼畜シアターノベル | 『鬼ノ棲ム桜』 | (ANOTHER ROOM) | |
家庭内陵辱調教SLG+AVG | 『家族の絆』 | (BIND) | |
2000年6月号 | シュール系エロAVG | 『トイレの女神様』 | (オーサリングヘヴン) |
私語りAVG | 『檻の中のわたし』 | (CAGE) | |
2000年7月号 | 海上パニックAVG | 『暁の岩礁』 | (ARIEROOF) |
マルチ秘め事SLG | 『ぺろぺろCANDY2』 | (ミンク) | |
2000年9月号 | 病院探偵AVG | 『SHE is...』 | (BELL-DA) |
エロティック料理SLG+AVG | 『さすらいの料理人』 | (ユピテル) | |
ドラマティックアニメーションAVG | 『eye's ONLY』 | (ainos) | |
おバカAVG | 『見参!! 桃ちゃん侍』 | (アクアハウス) | |
スーパーロリロリAVG | 『おまかせ☆でまかせ』 | (Triangle) | |
スポーツ陵辱AVG | 『Sweet Pleasure』 | (Cronus) | |
どきどき岸作成SLG | 『プリズム・ハート』 | (ぱじゃまソフト) | |
シュール系陵辱AVG | 『凌辱鬼』 | (コンプリーツ) | |
潜水艦ドタバタパニックAVG | 『凱旋! 無花果艦長!』 | (びい・えふ) | |
2000年10月号 | 詰めRPG | 『零式』 | (アリスソフト) |
大逃走SLG+AVG | 『うえはぁす』 | (ソフトハウスキャラ) | |
のびゲー | 『Cherry boy Innocent girl』 | (LIBIDO) | |
ケツゲー | 『ぶるまー2000』 | (Liar-Soft) | |
純愛もの学園恋愛ビジュアルノベル | 『笑わないエリカ』 | (ペンギンワークス) | |
2000年11月号 | サイコサスペンスAVG | 『Love call』 | (ミンク) |
和風ドラマティックAVG+ノベル | 『浪漫珠』 | (AngelSmile) | |
死人復活AVG | 『神サマお願い!!』 | (BELL-DA) | |
3Dインタラクティブ強制愛撫SLG | 『INTERACT CITY』 | (Dreams) | |
コミカル覗きマネージメント | 『B.B. Oh,Yes! Jonny!』 | (フェアリーテール) | |
車内調教SLG | 『車畜』 | (アーカムプロダクツ) | |
美姫調教SLG | 『EXILE』 | (ちぇりーそふと) | |
情愛育成SLG+AVG | 『Choir』 | (Rateblack) | |
インモラル・エロコメAVG | 『Don't Stop ママ?!』 | (オーサリングヘヴン) | |
星座AVG | 『星降る里へ』 | (エスクード) | |
おバカAVG | 『開運戦隊 巫女さんレンジャーリベンジ』 | (アクアハウス) | |
純愛コミカルAVG | 『るな・シーズン』 | (えみゅ~) | |
シュール系ハードボイルド調捜査AVG | 『CASE266』 | (コンプリーツ) | |
2001年1月号 | ラブコメえろベンチャー | 『Cute』 | (for) |
リアルタイムノベル | 『空のたかく』 | (UNCANNY!) | |
対戦ラヴほたAVG | 『HAPPY螢荘』 | (WAFFLE) | |
釣りゲー | 『女釣り』 | (ZENOS) | |
やるコメAVG | 『めぞんなやつら』 | (エクセルタ) | |
バイオレンスアクションAVG | 『吸血殲鬼ヴェドゴニア』 | (ニトロプラス) | |
学園熱血ラブコメAVG | 『Cosmic Girls』 | (ギルティ) | |
純情青春AVG | 『青い鳥』 | (ぱんだはうす) | |
ぶっかけAVG | 『ぶっかけ天使ミルキー&シルキー』 | (エヴォリューション) | |
3D尾行ゲーム | 『リバーシブルフェイス』 | (イリュージョン) | |
触手テーブルゲーム | 『淫獣幻夢3』 | (リンガーベル) |
このようなものが見受けられます。全数調査ではないので正確ではありませんが,概ね次のような結論が導けるかと思います。
で,あともう一つ付け加えるとすれば――
でしょうね。調べなくても言えそうな陳腐な推論ですけれど。
冒頭で一旦アリスソフト主因説を提示して放棄しましたけれど,ここで改めてAliceSoftの動向と照らし合わせてみます。2000年7月6日に『SeeIn青(シーンAO)』を発表していますが,〈学園もの・純愛系・コマンド選択式〉という巷にごくありふれたスタイルでありました。これが逆にアリスソフトにしては珍しい傾向を持つ作品だと位置づけられることになります。
ジャンル名冗長化に少なからず影響のあったアリスソフトに敬意を表して,この現象は『SeeIn青』以降に顕著である――と締めくくることにしましょう。ちなみに『SeeIn青』のジャンル分類は「AVG+LoveLove」です。
世の中に嘘と騙し合いが横行する中,静かにVisualArt’s/Key『リトルバスターズ!』(asin:B000OPT7VE)の終幕を眺めておりました。インストールしたのは3月11日で,それからちょっとずつ読み進めて。以下,とりとめもない放言。
ネタばれへの配慮は行っておりません。
成年コミックは何を選べば良いか分からない、という声を聞いた気がするので自分のお勧め作品を簡単にまとめてみます
え~と,うずうずしてきたので挙げてみます。
選択にあたっては,(1)ここ2~3年以内に刊行された入手しやすいものであること,(2)表紙を見て好き嫌いを判断しても差し支えのない出来であること,(3)嫌悪感をもたらしやすい内容をあまり含んでいないこと――を基準にしました。
撲殺されても生き返るコミカル空間で,トイレの花子さんにあれこれされます。トーン処理が巧みで,メリハリのきいた絵。
もともとは1999年に刊行された同名作品の新装版。初心者へのアドバイスとしては,松文館のエースファイブコミックスは表紙買いしない方がいいです,と申し上げておきましょう。
陵辱ものでありながら最後はコミカルに落とすのが,この作者の持ち味。どうぶつ娘専業ソフトハウスとして他の追随を許さなかったフォアナイン(1995年)『わくわく麻雀パニック!』シリーズの原画家さんであります。キャリアは長いのですが寡作なために単行本の数が少ないです。
「ジャンルは枯れてからが旨い」と申しますが,2003年の冬コミにも『痕-きずあと-』の同人誌を出していたのがみた森さん。本作で主人公は,出生率減少に悩む亜人種たちから子種を授けてくれとせがまれます。犬娘+ヴァンパイア+妖狐によるハーレム。美少女ゲームのヒロイン複数制をシーケンシャルな構造にしたら,こうなるよなぁという感じ。
なお,『狼と香辛料』のアニメ化により2008年上半期にはケモノ娘がトレンドになると予想されます。旬のうちにご賞味ください。
『To Heart』が提示した〈ロボットとの恋愛〉を,もう一歩推し進めたのが本作。ロボットとともに暮らし,ロボットとともに老いていくところまで描いています。本作を手にして,「たかだかエロマンガなのに」と思うか「成年コミックでありながら」と感じるかで方向性が分かれることでしょう。
なお,海野螢といえばショートカットつるぺた娘です。お買い上げ前に,本作の裏表紙を見て属性の好みをご確認ください。
ツンデレぺたぺた。小悪魔ちっくな少女がたっぷり。
ロリータコミック誌『LO(エルオー)』掲載作。このあたりまで手を広げるのは「ペドフィリアですが何か?」と胸を張って言えるようになってからの方がいいかもしれません。
ここ数年で画力が向上した作家さん。とろけるような描線が特長ですが,ときどき頭身が崩れてしまうことがあります。
あさりよしとおのお弟子さんです。絵柄があまりにも酷似していて,それだけでも一見の価値があります。内容は「ふたなり」だらけなのですが,あまり嫌悪感をもたらさないドライな仕上がり。
〈調教もの〉というと身体的拘束というイメージが強くあるかと思いますが,まったく正反対の印象をもたらしてくれるであろう作品。
高度に突き抜けたSMはコントと区別がつかない。
今や一般方面に広くしられるに至ったぢたま某さんですが,「『まほろまてぃっく』以前」を知る人ならば比類無きし~し~好きとして記憶にとどめているはず。21世紀に入っても健在でした。
一般作品です。しかし,これは成年指定制度の盲点をついたレジスタンスであると言っても差し支えないでしょう。百合もの。全体としてストーリーを把握するのが非常に難しい作品ですが,表紙の絵を見て気に入るならば。
genesis2007/11/18 22:40追伸) b:id:mine-oへのお返事。ここで挙げた10人だとロリに偏っているので「ほりほねさいぞう」を入れてバランスをとろうかとも考えたのですが,エログロないしスカトロは第3の条件に鑑みて除外しました。もし,二十傑を選出するようなことがあれば入れたいですね。
mine-o2007/11/18 23:03まああれは半分冗談のような物ですが(笑)ただ、ほりほねのまんがって敷居は高いけどポルノを突き抜けちゃってる(つまりポルノの外部にある)という点では案外ふつうのエロマンガよりも普遍性(つまり理解されやすさ)があるんではないかな、とは思います。
http://members.jcom.home.ne.jp/then-d/html/project.html
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
えらく出来の悪いものしか書けませんでした。
国会図書館へ行き,10年ほど前の雑誌を調べてきました。請求記号[Z14-B204]を取りだしてもらい,
を閲覧。美少女ゲームの販売本数が実数で報告されている貴重な資料です。時期によって編集方針が違っているため,実物を見ながら必要な箇所を探していく。
複写を採るためには,各巻ごとに伝票に「○巻○号○頁~○頁」と伝票を書き,しおりを挟んでいく必要があるのですが,3時間ほどかかりました。
美少女ゲーム論を展開するにはアクセスが容易な共有財産としての基礎データの必要性を感じています。これから先,しばらくは,書誌学的な作業に勤しむつもりです。
美少女ゲームに関して文芸評論的アプローチが用いられ始めたのはいつごろで、どのような契機があったのか、ということについて少し考え込んでみたり。
それについては東浩紀『動物化するポストモダン』(2001年11月)をマイルストーンにして構わないのではないでしょうか。パソコン通信(FCGAMEX)のログを探せば,アプローチを試みた人の足跡が見つかるかもしれませんけれど……。
東よりさらに分け入って水脈を探すとなると,斎藤環『戦闘美少女の精神分析』(2000年4月)の存在が思い浮かびます。ラカン派の精神科医という外部の視点から《萌え》が記述される試みがなされたことにより,オタクを客観化するアプローチの一つが示されたわけで,そのインパクトは大きなものでした。
文学部の人と話をした時に,どうしてアカデミズムの領域では美少女ゲームを素材とした評論が行われないのかを聞いてみたことがあります。その理由の一つとして挙げられたのが「ポルノを扱うとフェミニズムに触ってしまうので危険だ」というものでした。斎藤+東がセクシャリティを迂回してみせた,というのは重要な舞台装置だと思います。
関連したところでは,ネットワークおたく社会に対する“TINAMIX”の影響力は計り知れないものがありました。東による問題設定は,2000年2月に示されています(創刊は同年1月1日付け)。
雑誌(紙)媒体ですと,『カラフルピュアガール(Colorful PureGirl)』1999年7月号(通算第3号)に掲載されている更科修一郎の“N.C.P.(Natural Color Phantasm)”が特筆に値します。その前の第1回と第2回はゲームレビューという体裁を取っているのですけれども,第3回から評論としての性格が強くなっています。「ロボット少女は電気羊の夢なんかみない」では〈少女幻想〉や〈マチズモ〉に触れています。ちなみに,時期的には『Kanon』の発売(1999年6月4日)より前の著作です。
他方,d:id:then-dさんによる『ONE』のテクスト論は,1999年5月から始まっています。
こうして見ますと,美少女ゲーム評論の活発化とビジュアル・ノベル形式の普及は時期的に重なっている――というのが無難なところでしょうか。
私自身の記憶を辿ると,考察(シナリオ解釈)を必要とした最初は『DESIRE 背徳の螺旋』(1994年7月)でしたが。
というのが『永遠の現在』向け原稿のプロットを書き起こす際に用意したメモ。ただいま迷走中...