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milkyhorse(Rosebud Side) RSSフィード

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-恋愛ゲームシナリオライタ論集2『+10人×10説』寄稿のお知らせ (10/12/15)

-Tactics/Key諸作品におけるファンタジー世界観~時系列の共鳴・共振ないし円環構造,もしくは共時性~(その1) (07/09/19)

-Tactics/Keyゲーム評論集『永遠の現在』収録原稿の補論3―沢渡真琴シナリオに関する加筆情報 (07/08/19)

-Tactics/Keyゲーム評論集『永遠の現在』収録原稿の補論2―誤植箇所の訂正情報 (07/08/19)

-Tactics/Keyゲーム評論集『永遠の現在』収録原稿の補論1―拙稿執筆者の依拠する立場について (07/08/18)

-『リトルバスターズ!』ネタバレ・ファースト・インプレッション(考察の端緒になるかも) (07/07/29-07/08/14)

-Tactics/Keyゲーム評論集『永遠の現在』寄稿のお知らせ (07/07/20)

-もしも『CROSS†CHANNEL』のシナリオ読解を書くとするならば(今さら) (07/07/18)

-TVアニメ「Kanon」(京都アニメーション版)マルチシナリオ構成分析表 (1-24話/07/03/18)

-美少女ゲーム/ノベルゲームの独自性に関する一考察~アニメ/コミック/ノベルとの比較~ (07/02/13)

-第2期テレビアニメ版「Kanon」(京都アニメーション制作)・川澄舞シナリオにおける"世界観の穴" (07/01/16)

-美少女ゲーム/ノベルゲーム/ビジュアルノベル/恋愛ADVに関する史観例 (07/01/12)

-美少女ゲームのマルチシナリオ分類例 (06/12/31)

-美少女ゲーム/ノベルゲーム/ビジュアルノベル/恋愛ADV (06/11/14)

【pinsyan@milkyhorse.com (@は@に修正)】【記事本文は下のほうです】
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2007-08-12

『リトルバスターズ!』ネタバレ・ファースト・インプレッション(考察の端緒になるかも) 03:13 『リトルバスターズ!』ネタバレ・ファースト・インプレッション(考察の端緒になるかも) - milkyhorse(Rosebud Side) を含むブックマーク はてなブックマーク - 『リトルバスターズ!』ネタバレ・ファースト・インプレッション(考察の端緒になるかも) - milkyhorse(Rosebud Side)

 『リトルバスターズ!』(2007年,Key)を,深夜に睡眠時間を削ってプレイして,筋肉いぇいいぇーいっ!!(御挨拶)。

 8月14日現在,神北小毬シナリオ(ANOTHER→GOOD)→能美クドリャフカ・シナリオ(ANOTHER→GOOD)→三枝葉留佳シナリオ(ANOTHER→GOOD)→西園美魚シナリオ(ANOTHER→GOOD)→棗鈴シナリオ(1周目)→来ヶ谷唯湖シナリオ(ANOTHER→1周目)→棗鈴シナリオ(2周目)→リトルバスターズ・シナリオ(Refrain編・1周目)→来ヶ谷唯湖シナリオ(2周目)→リトルバスターズ・シナリオ(Refrain編・2周目)の順で読了しました。

 その時点での(気の早い)猥雑な感想は下記の通り。めちゃくちゃ思いつきのまま,しかも自分に言い聞かせることが主目的の,そんな野暮なことこの上ない箇条書きです。

 ちなみに,Tactics/Keyゲーム評論集『永遠の現在』(C72頒布予定)に収録されている諸論考に基づく用例を当たり前のように使っていますので,すごく不親切な箇条書きです。

 

  • まず最初に。直前に『河原崎家の一族2』『CROSS†CHANNEL』をプレイしていたおかげで,「この世界の秘密」について,(なぜか)感度良好です! 見える…。ボクにだってルー○が見えるんだ!(何が?)
  • もっとも時系列が共振ないし円環しているのは,『ONE~輝く季節へ~』『AIR』『CLANNAD』もそうだったわけですから,馴染みはあるはずなんですけどね。
  • ただし,来ヶ谷唯湖シナリオのラストだけは,「どこ」なのか分からない!*1 ぐはあ。ひょっとして,「この世界の秘密」については,リトルバスターズ・シナリオ(Refrain編)で棗恭介がもっともらしく言及しているけれど,それでも全貌が明かされてはいないのか。いや,「三人」のはずが「四人」残っていたことからも,彼のもっともらしい解説が単なる推測に過ぎないことは察せられるんでしょうけれど。よもや『Kanon』で美坂栞の言及する「夢の世界」が彼女の推測に過ぎなかったという例のギミックが再発動するとは…。そういえば,『AIR』でも"The 1000th summer"の真相に辿り着いた千年後の登場人物は一人もいませんでしたね。真相に辿り着けなくても,なお物語化を目指し,推し量り続ける。
  • とすると,来ヶ谷唯湖シナリオを中心に,各シナリオで携帯電話が不通になるタイミングや,聞こえない昼の校内放送,突如挿入されるガラス越しの白い風景といった諸伏線を洗い直す必要が…。三枝葉留佳シナリオ(ANOTHER END)での「彼女」の台詞とか…。うわあ,楽しそう(棒読み)。
  • でも,たぶん,「この世界の秘密」については,そのメカニズムを解明し切らなくても,ストーリーの根幹が左右されることはないはずです。せいぜい,棗恭介・井ノ原真人・宮沢謙吾の三人組と,神北小毬さん,来ヶ谷唯湖さんがそれぞれ八人の光の球の中で独自の立ち位置を備えていることくらいを押さえておけば充分ではないかと。
  • それから,「この世界」の出来事のうち,どこまでが生活世界での出来事の再現で,どこからが「この世界」独特の出来事なのかを追究することも,あまり有益とは思えません*2。いずれにせよ,少なくとも生活世界に帰還する直枝理樹と棗鈴には,「この世界」での出来事全般について潜在的な経験の累積があるので,やはりストーリーの根幹が左右されることはないからです。
  • 「この世界」を名付けるとするならば,「虚構世界」と呼ぶのでは不実に過ぎる。そもそも「虚構世界」って何だ。テキストには「虚構世界」どころか「虚構」という文言すら一回も登場していない。せめて「夢の世界」と呼んだほうがマシなのでは。『Kanon』と混同してしまいそうなところが難点だけど。
  • あ,それから,上では「生活世界に帰還する」とメモしましたが,実はそうでない解釈がちらついて仕方ないのです。少なくともそういう解釈を許容する余地はあると思うんです。たとえば,能美クドリャフカ・シナリオや来ヶ谷唯湖シナリオのラストと照合してみると。Tactics/Key諸作品のラストが単純だなんてあり得ない!それでもストーリーの根幹が左右されることはないんですけどね。
  • …やっぱり。来ヶ谷唯湖シナリオ(2周目)の後,リトルバスターズ・シナリオ(Refrain編)の2周目に向かうと,ラストが変わるのか!激しく納得した。
  • というわけで,リトルバスターズ・シナリオ(Refrain編)の1周目では,直枝理樹と棗鈴と,もうひとり―来ヶ谷唯湖さんは生活世界に帰還していない説。まったく突拍子がないわけでもない。来ヶ谷唯湖さんは「その先を願ってしまったのでした」。けれど,現段階では粗も多いので,触るな危険。要精読。それにしても,来ヶ谷唯湖さんって何者?

  

  • そして,シナリオのクリア順は冒頭の通りで最善だったと確信しました。全てが一つへと収斂していく様相は圧巻です(そうなるに違いないという作り手への信頼がないと,途中で挫折するかもしれませんが)。
  • Refrain(リフレイン/ルフラン)編ですが,「繰り返し」を「自力で終える」という単語の意味そのままですね。ストーリーと世界観の両義語になっているのは,さすがといわざるを得ません。
  • 端的にいって,『MOON.』『ONE~輝く季節へ~』『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『智代アフター』累代のガジェットが満載です。Tactics/Keyの先行作品全てを読み手側が踏まえる場合と,そうでない場合とでは,「見えてくる世界」がまったく違ってくるのではないでしょうか。どういうことかというと,テキストから読み取り可能な情報量がまったく異なってきます。たとえば,

【少女】「やっと,会えた」

終幕を告げる声がした。

いつの間にいたのだろう。

初めからそこにいた白鳥のように,少女は防波堤の上に立っていた。

海を背にして,西園さんを前にして。

水平線に沈む夕日が逆光になって,少女の顔は陰となっているはずなのに。

僕の目にはっきりと届いた。

(『リトルバスターズ!』西園美魚シナリオ より)

という引用を例にするならば,「空」(『ONE』『AIR』『CLANNAD』),「雲」(『ONE』『AIR』),「夕焼け」(『ONE』『Kanon』『AIR』),「水平線」(『ONE』『AIR』),「波打ち際」(『MOON.』『AIR』『智代アフター』),「もう一人の自分」(『MOON.』『ONE』『AIR』),「少女の告げる声」(『MOON.』『ONE』『Kanon』『CLANNAD』),「私だけが知っている」(『MOON.』『ONE』『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『智代アフター』)といったふうに,一見地味なように思われる地の文から,情景描写に仮託されている情報をどんどん引き出すことが可能となっており,その個々のモチーフの使用場面の微妙な異同を掘り下げるという極めてマニアックな(末期的な)な作業を経ることによって,文章に含意されているところの面白みを深めることができるようになっています*3

  • したがって,『リトルバスターズ!』に限っては,作品論的な読解よりも,作家論的な*4読解のほうが有効な気がします(裏返すと,万人受けするかという見地からは,そこがとんでもない短所ということになるでしょう)。

 

  • さて,そんな『リトルバスターズ!』ですが,Tactics/Key諸作品の系譜は『MOON.』の「痛み」(こんな感じ)から始まっているのだということを,再確認させてくれます。ついに,『MOON.』へ還るときが来たのですね…*5。「地獄絵図」上等*6。…10周年,感慨深いなあ。
  • 共通/個別シナリオ相互間の整合性については,ジュブナイル的主題,ファンタジー世界観の両要素とも,Tactics/key諸作品歴代を通じて最も完成度が高いです。棗鈴シナリオ以外の個別シナリオも,シナリオ単体的な伏線シナリオ横断的な伏線の双方が丹念に張り巡らされており(しかも2周目,3週目とテキストが微妙に変化する),再読してみると発見が多くてたまりません(違和感に注意すれば,おそらくは初読で気付くことができるでしょうが)。
  • というわけで,麻枝准氏の担当箇所だけでなく,都乃河勇人・城桐央・樫田レオの三氏が担当された箇所についても,もっと丁寧に,スローリーディングでシナリオが読まれてほしいと思わずにはいられません。リトルバスターズ・シナリオ(Refrain編)が際立っているという印象を受けたとするなら,それは上述の通り共通/個別シナリオ相互間の整合性が抜群だからに他なりません。
  • 個別シナリオは,あえて(いわゆるひとつの)BAD ENDから先に読んだほうが絶対に面白いです。というより,BAD ENDを通過することに独自の意義があるシナリオ構造を採っているふしがあります。
  • 個別シナリオでストーリーが支離滅裂ないし強引っぽくなってきたと思われる場合は,ファンタジー世界観からの必然を疑うべし。「この世界」は,個別シナリオの終盤,壊れていく。すると面白い見方が発見できるかも。これは『ONE~輝く季節へ~』以来の伝統芸能。『ONE~輝く季節へ~』で長森瑞佳がひどい仕打ちを受けたり,『Kanon』で相沢祐一と月宮あゆが突然キスをするのも,この要素が否めなかったじゃないか!(誰に対して力説してるんだ)
  • でも,「少年の心はまこと度し難い」は誤用っぽいぞ。「救いようがない」だなんてあんまりだ。「解し難い」じゃないのか。来ヶ谷唯湖さんの抱え込んでいた課題的にも,そっちのほうが無難なはず。
  • 先行作品では危険球気味なことも多かった「敵」のガジェットですが,『Kanon』川澄舞シナリオの「生徒会」や『CLANNAD』春原陽平/春原芽衣シナリオの「サッカー部」とは異なり,

僕だって,知っている。

この世には,悪意が存在する。

(『リトルバスターズ!』西園美魚シナリオ より)

今回の『リトルバスターズ!』での用例は,一応,『MOON.』の「FARGO」程度には(←ひでえ)説得的な描写になっていたでしょうか。シナリオごとに使い分けがあって,この点も面白いです。

  • それから,さりげなくイベントCGのあった古式みゆきさんなのですが,彼女って,ひょっとして生活世界では…。
  • ところで,重要と思われる場面で多用されているBGM「ともしび」(作曲:麻枝准/編曲:Manack)って,『MOON.』のBGM「おかあさん」(作曲:YET11)を彷彿とさせませんか。三枝葉留佳シナリオでの使われ方*7なんて,そのまんまという気がします(考えすぎ)。
  • 棗鈴と来ヶ谷唯湖以外の個別シナリオのエンディングは,一見明快なハッピーエンドのように思えるのですが,「この世界の秘密」をそれとなく把握した後,エンディングテーマ「Alicemagic」(作詞:都乃河勇人)や「雨のち晴れ」(作詞:樫田レオ)の歌詞を読み返すと,その暗喩っぷりに愕然とするんですけど。何だこれ。特に,「Alicemagic」は凶悪。
  • そして,棗鈴シナリオ(2周目)のエンディングテーマが「リグレット」(作曲編曲:PMMK)ですか…。やはり,「後悔」しなければ,本当に大切なもののかけがえなさに気付くこと,そして,「強さ」を手にすることはできないのですね。これもTactics/Key累代のモチーフですけど…。徹底的だなあ。
  • マキシングルが先行発売されていたオープニングテーマの「Little Busters!」(作詞作曲:麻枝准/編曲:I've)と挿入曲(だったのかよ!)「遥か彼方」(作詞作曲:麻枝准/編曲:Manack)ですが,ゲームを終えてみると,やっぱり歌詞は直球勝負でしたね。

 

  • Tactics/Key諸作品からジュブナイル的主題を読み取ろうとする場合,実は(1)『MOON.』でうっかり全部書きなぐってしまった内容を,(2)『ONE~輝く季節へ~』→『Kanon』→『AIR』→『CLANNAD』古河渚シナリオ→『CLANNAD』一ノ瀬ことみシナリオ→『CLANNAD』坂上智代シナリオ/『智代アフター』という六つの作品群を通じ,連作的に洗練させた上で仕立て直しているというのが,当欄執筆者の私見なのですが,今回,『ONE~輝く季節へ~』から『CLANNAD』『智代アフター』に到るまで分散していたテーマを全て単一の作品にまとめてみせたのが,(3)『リトルバスターズ!』という作品の特徴の一つといえるのではないでしょうか。通時性と共時性。―ぶっちゃけると,死生観。遺す者と遺される者,それぞれの内的対話。
  • ちなみに,ここではジュブナイル=少年少女の成長物語(思春期の真っ最中?)の意なのですが,Tactics/Key諸作品に通底するジュブナイル的主題を指すときは,むしろ児童文学(思春期の入口付近)に典型的なモチーフまで遡及しているといったほうが適切かと思われます。
  • たとえば,「遊び」とか,「夕焼け」とか,「壊れるのは一瞬」とか,「繋いだ手(あるいは,手のひら)」とか,「後悔する(あるいは,喪失と事後的な幸福の発見)」とか,「がんばる」とか。特に,今回の『リトルバスターズ!』では「繋いだ手(あるいは,手のひら)」のモチーフが極めて印象的です。
  • 『リトルバスターズ!』では,「同じ視線から眺める」というモチーフに何かこだわりがあるんでしょうか。これもまた,ひとつの共時(シンクロ)。
  • ジュブナイルどころか,こうした児童文学的な主題と親和性が大きいと思い至れば,棗鈴のキャラ造形も妙に納得できてしまうところが,何ともはや。
  • 企画者の麻枝准氏は,某インタビュー記事*8で,「『CLANNAD』が(Key的な)ストーリーの集大成だとすれば,今回はエンターテインメントの集大成です」とおっしゃっていましたが,なかなかどうして,『リトルバスターズ!』はTactics/Key的なストーリーの集大成(KeyだけでなくTacticsを含むところを強調しておきたい)にもなっていると思います。シナリオライター・麻枝准氏の引退作というだけのことはありますね。
  • これはもう,エロゲでもギャルゲでもない,ただのノベルゲームにまで還元されましたか。万感を込めて,「さようなら」と伝えたいです(誰に?)。

 

  • おまけ。Tactics/Key的なキャラクターの集大成は,女だけでなく男もみんなヒロインでした! ヒィイーーーーヤァーーーッホォォォオオオゥゥゥゥーーーッ!! イヨェェエェエエーーー!! ゲホッゲホッ。(爽やかな笑顔+声をからしながら)

 

*1:マジで誰か教えてください。

*2:疑いだすときりがないし,そんなファンタジーの深遠に浸る楽しみは,ここではあえて棚上げしておきたいところです。

*3:要するに,『MOON.』や『ONE~輝く季節へ~』てんこ盛りで「いよっしゃぁーっ!ひゃっほぅーーーーぅ!!」なのです。

*4:ここでいう作家とは,麻枝准氏単体を指すのではなく,Key所属シナリオライター陣という集合体を対象とするものです。

*5:突然還ったわけでもないと思うのです。『AIR』遠野美凪シナリオ・夢幻END→『CLANNAD』藤林杏シナリオという密やかな継受があるので。

*6:「世界は筋肉に包まれた」が単なるギャグ・エンドではなくて,これまた伏線だったことに絶望した!

*7:「家族」(あえてかぎかっこ付き)で囲む食卓のシーンのアレ。

*8:麻枝准・都乃河勇人「『リトバス』特大インタビュー4連発!! INTERVIEW PARTⅢ 文SCENARIO」(2007年7月,メディアワークス『電撃G's Festival! Vol.9 リトルバスターズ!』)より。

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